代表伊藤の履歴書
2013.12.04
私にとって最初の就職先は、東京都品川に本拠を置く大型ヘアサロン。
専門学校(通信課程)への進学を決めた後の就職活動。
もちろん大学からの斡旋はありませんので勝手も分からず、自分の足で探して、お話を伺って。
先方もやはり、その特異な進路に驚かれる方ばかりでしたが、当時、一番快く迎えて下さったオーナー様のサロンでお世話になることにしました。
◇美容師生活のスタート
大学の卒業式と同じ日に始まった新人研修からいよいよ美容師としての生活がスタート。
例に漏れず、とてもハードな日が続きました。
朝7時に集合してから2時間強のシャンプー練習。
10時〜21時までは清掃業務を中心にサロンワーク。
営業終了後もまた日付が変わるくらいまでサロンに残り、シャンプー練習。
初日の業務が終わった後の足の痛さと言ったら、駅の階段を上るのに一苦労。
手すりを頼りながら家路についたものでした。
◇忘れたノート、拾ってくれた先輩
シャンプーの練習に取り組んでいた頃、印象的だった出来事があります。
当時は店内の試験をパスしたスタッフが実際にお客様へのシャンプー施術に入客するチャンスを頂けていたのですが、その試験を受験するまでに規定の回数先輩スタッフにモデルになってもらい、その評価をノートに書いていただいていました。
その延べ回数が規定回数に達すると、そのノートを持って受験できるシステムになっていたのですが、当時の一生懸命さが空回りしたのでしょう、私がそのノートをお店に忘れて帰ってしまい、没収されてしまうということがありまして。
今思えば何もそこまで、、、なんて思わなくもないですが。
当時のルールではその時点で、そこまでのトレーニング回数をリセット。
また0からお願いしなくてはいけないことになっていて、私もすっかり肩を落としてしまっていました。
試験をパスして、入客していく同期スタッフもちらほら。
焦る気持ちを抱えながら、コツコツトレーニングに励んでいた私に、一期上の先輩アシスタントの方が声をかけて下さいました。
「伊藤君、何度洗ってもいいから私をモデルに使って今日のうちに(規定回数を)クリアしよう。」
当時、お世辞にも上手とは言えない自分のシャンプー。
首や頭皮への負担もいかばかりだったでしょう、しかしながらその先輩は終わるたびに「はい、もう1回」、「はいもう1回」、「落ち込んでいるヒマなんてないよ。はいもう1回行こう!」。
額に汗して、というのはああいうことを言うんだろうと思います。
ほとんどのスタッフが帰ってしまった後もその先輩はずっと私のモデルになって下さり、見事その日のうちに規定回数をクリアすることが出来ました。
「シャンプーは指で洗うんじゃなくて、気持ちで洗うんだよ。」
サロンワークをしている時には厳しい叱責を受けることも少なくありませんでしたが、とても愛情を感じることの出来た体験でしたし、「今度伊藤君が後輩を指導するキャリアになった時に、きちんと(その後輩に)つないでいってあげてね。」という先輩の言葉に、美容師という職業において大切な「気持ち」の部分を教えていただくことができました。
蛇足の感はありますが、この先輩から頂いた体験は、今の私の立場においても、とても大切なものになっています。
美容師は誰ひとりとして「ひとりでは美容師にはなれない」。
自分が頂いた体験を、これからもきちんと伝えていきたいと思っています。
(つづく)