ぼくのおとうさん

イチエの毎日。 2022.06.19

小学校3年生のゴールデンウィーク。

 

 

今はドーム球場に変わってしまいましたが、当時は屋外型の、後楽園球場。

 

 

 

 

「日本ハム対西武ライオンズ」

 

 

その前の年あたりから野球に興味を持ち始めていたぼくを、おとうさんが野球観戦に連れて行ってくれました。

 

 

祝日で満員の野球場。

 

 

前売り券は持ち合わせずに、当日券。

 

 

席はレフトスタンド最上段の立ち見席。

 

 

 

 

背丈の届かないぼくは、それでも、それなりの背伸びをしながら大人たちの頭の隙間をぬうようにして、バッターボックスに立つブルーのユニフォームを着た西武ライオンズの秋山選手や清原選手のバッティングに釘付けになっていました。

 

 

試合の結果は覚えていませんが、たしか西武ライオンズの選手が打った打球がレフトスタンドギリギリ。背丈の届いていないぼくからすると、視界に入りきらない、下の方にホームランボールが届いて、大人たちがみんな手を上げて喜んでいて、僕はますますその打球がどこらへんに落ちたのか見えないのだけれど、球場の興奮に任せてお父さんとハイタッチをしたことを覚えています。

 

 

 

 

「まも〜。お前これじゃまるで、ただの野球の実況中継な作文じゃないかよw。」

 

 

 

 

 

 

後日この日のことを、今よりもずっとたどたどしい日本語で、400字詰めの原稿用紙に書き詰めて、『GWの思い出』という作文にして、先生に提出したことを覚えています。

 

 

 

 

それから35年の時間が、過ぎました。

 

 

 

「よかったら、どう?」

 

 

 

 

ぼくはおとうさんと違って、準備を大切にするタイプになったので、ちゃんと事前に都合を聞いて。

 

 

 

 

「ちょっと今日の今日で申し訳ないんですが、19時くらいから席空いてますか?」

 

 

 

 

でもぼくはおとうさんに似て大事なところが抜けていたりするので、当日になってあわてて店を予約して。

 

 

 

おとうさんの息子として過ごしてきた40年となにがしかの話とか。

 

 

これからの話とか。

 

 

ぼくのおとうさんとして過ごしてきた40年となにがしかの話とか。

 

 

ぼくのおとうさんになる前の話とか。

 

 

 

交換したり、共有したり。

 

 

 

「あれ、そうだったっけか?」

 

 

 

思い出したり、爆笑する時間を過ごしました。

 

 

 

今日の次の日はいつも明日なので。

 

 

 

いたずらに過去を振り返って時間を浪費してしまうのはもったいない気もしますが。

 

 

 

思い出そうと決めて、思い出すためだけに、思い出す時間をもつこと。

 

 

 

 

 

忘れていた風景が蘇ってくること。

 

 

 

そしてそれを共有できること。

 

 

 

その味がわかるくらいには長く生きてくることができたし。

 

 

 

今があること。

 

 

 

あの日、ぼくのおかあさんをあわてて産院に連れて行ってくれたこと。

 

 

 

 

 

 

2人でぼくを迎えてくれたことを、とても感謝しています。

 

 

 

せっかくいただいた人生。

 

 

 

これからも、愚息なりに。

 

 

 

あっちこっち寄り道しながら、道草も食いながら。

 

 

 

まだまだ人生味わい尽くしたいなと思っています。

 

 

 

おとうさんも、いつまでも元気に。

 

 

 

 

 

締め茶漬け。

 

 

 

味わっていきましょ。

 

 

 

父の日に寄せて。

 

 

 

あざっす。

 

 

 

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